【細かなる口伝いはく。音曲・舞・はたらき・振り・風情、これまた同じ心なり】
この中で世阿弥は上手は自分で舞や謡曲を変化させて、おもしろさを演出しろ、と書いています。
私たちのセールストークでも同じなんですよね。
時には強く、時には優しく、早く遅く、多く少なく・・・
そのときの商談もそうですが、お客様とのながいおつきあいの中では、話題も含めてそういう変化・抑揚が必要です。
これは、販売するためのテクニックとして書いているのではありません。お客様に商品の内容をよく知っていただくために必要ですし、楽しいお買い物を演出するためにも重要な、いわばエンターテイメントなんです。
作った物がおいてあれば売れるなら商人なんて必要ありません。
特に対面販売の場合は、ショッピングを楽しんでいただくという観点が絶対に必要です。
商品の見え方も、販売員によってずいぶん違います。
どんなに商品が気に入っても、販売員が嫌いだとお客様は購入されません。
商品さえよければ、物は売れると考えているならそれは、大きな誤解です。
買い物が楽しくなければ、特に高額品はお求めにならないのです。
もちろん、エンターテイメントが過剰になって、経費がかかりすぎるのはいけませんが、私たちが演じる分には無料です。
前に、呉服屋がキモノを着るの着ないの、と話を書きましたが、自分が演出上必要だと思えば着ればいいのだし、そんなことしなくてもいいと思えば着なければいいのです。
ただ、私はボロいキモノを着て、センスの悪さを露呈するくらいなら、着ないのも選択肢の一つだろうと思います。
楽しい話題やおもしろい語り口、着る物のセンス、様々な幅広い話題・・・それを総動員して『いかにお客様に楽しんでいただくか』です。
私は問屋ですから、直接お客様とおつきあいする事は少ないです。
しかし、その代わり、多くの問屋と競争しなければなりません。
その中からうちの作品を買っていただくには、どうしたらいいのか?
個性的な高品質な作品、そして、プラスアルファがいるわけです。
『次はどんなおもしろいの持ってくるのかな?』
『お稽古は進んでるかな?』
『沖縄の話がまた聞きたいな』
などなど、『買わないけど、まぁ上がりぃな』と思ってもらえるようにしないといけないわけです。
ですから、いろんな事を勉強して、おもしろく話ができなければいけません。
ただし、しゃべりすぎもいけない。
ここいらが難しいのですが、また別の機会に。
この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。