『商道 風姿花伝』第41話

【細かなる口伝いはく。音曲・舞・はたらき・振り・風情、これまた同じ心なり】

この中で世阿弥は上手は自分で舞や謡曲を変化させて、おもしろさを演出しろ、と書いています。

私たちのセールストークでも同じなんですよね。

時には強く、時には優しく、早く遅く、多く少なく・・・

そのときの商談もそうですが、お客様とのながいおつきあいの中では、話題も含めてそういう変化・抑揚が必要です。

これは、販売するためのテクニックとして書いているのではありません。お客様に商品の内容をよく知っていただくために必要ですし、楽しいお買い物を演出するためにも重要な、いわばエンターテイメントなんです。

作った物がおいてあれば売れるなら商人なんて必要ありません。

特に対面販売の場合は、ショッピングを楽しんでいただくという観点が絶対に必要です。

商品の見え方も、販売員によってずいぶん違います。

どんなに商品が気に入っても、販売員が嫌いだとお客様は購入されません。

商品さえよければ、物は売れると考えているならそれは、大きな誤解です。

買い物が楽しくなければ、特に高額品はお求めにならないのです。

もちろん、エンターテイメントが過剰になって、経費がかかりすぎるのはいけませんが、私たちが演じる分には無料です。

前に、呉服屋がキモノを着るの着ないの、と話を書きましたが、自分が演出上必要だと思えば着ればいいのだし、そんなことしなくてもいいと思えば着なければいいのです。

ただ、私はボロいキモノを着て、センスの悪さを露呈するくらいなら、着ないのも選択肢の一つだろうと思います。

楽しい話題やおもしろい語り口、着る物のセンス、様々な幅広い話題・・・それを総動員して『いかにお客様に楽しんでいただくか』です。

私は問屋ですから、直接お客様とおつきあいする事は少ないです。

しかし、その代わり、多くの問屋と競争しなければなりません。

その中からうちの作品を買っていただくには、どうしたらいいのか?

個性的な高品質な作品、そして、プラスアルファがいるわけです。

『次はどんなおもしろいの持ってくるのかな?』

『お稽古は進んでるかな?』

『沖縄の話がまた聞きたいな』

などなど、『買わないけど、まぁ上がりぃな』と思ってもらえるようにしないといけないわけです。

ですから、いろんな事を勉強して、おもしろく話ができなければいけません。

ただし、しゃべりすぎもいけない。

ここいらが難しいのですが、また別の機会に。  

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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