『商道 風姿花伝』第44話

【一、能によろづ用心を持つべき事】

世阿弥は鬼神を演じるときには柔和であれ、体を強く動かすときは足踏みの音をさせるな、と書いています。

歌手も、悲しいときには少しほほえむような感じで歌うと良いそうです。

これはテクニックとは言えないかもしれませんが、セールストークでも言える事ではないかと想います。

出だしの部分はゆるやかに、話が進むにつれて声のボリュームとトーンを上げ、熟してきたらトーンを落とし、声を優しく、場合によっては黙る。

仮にカッとなってしまったときは、にこやかにほほえむ、動きを緩やかにする・・・

私はそう、心がけています。

もちろん、馴染みのお客様の時は終始ワイワイ言っているときもありますが、初めてのお客様の時には出来るだけじっくり考えて頂く、またそのための情報を適切にタイミング良くお出しするようにしています。

つまりは、お客様の心の動きを正確に把握して、お客様が必要とされる情報をわかりやすく提供するということですね。

こちらがガンガン出していくばかりだと、お客様は引いてしまわれますし、一度引いてしまわれると、なかなか話を聞いてもらえなくなります。

そうなったら、商談はそこで終わりです。

私達は話をきいてもらって、ナンボです。

お客様と一緒に、沈んだり盛り上がったりしていてはいけません。

ここで世阿弥も書いていますが、これは実際に経験を積んでいないと習得出来ません。

理屈ではないし、セオリーもありません。

お客様との相性もあります。

商談の進め方、商品の定時の仕方、しまい方、商品を出す前の話、態度、しまうときの話ぶり・・・

トークの中身以外に、いっぱい心得ておかねばならないことがあります。

いちばん大事なことは、自分が何を伝えたいのかをはっきりと自覚して、そのためのベストな方法を常に追求するという姿勢だと想います。

いくら口で言っても、文章で書いても、これだけは、やってやって、喜んだり、悲しんだり、口惜しい思いをしたりしないと、解らないkとだろうと想います。

まさに、奥義なんですね。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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