【一、種といつぱ、芸能の本説に、その態をなす人体によつて、舞歌のため大用なる事をしるべし】
ここからは、能作、つまり能を作ることについて書かれています。
世阿弥が能をどのようにしてい作ったか・・・それは本を読んでください(^_^)
私の作品づくりについて書きましょう。
私の場合ネタは、デパートの店頭、呉服屋のショーウィンドウ、そんなところにある着物を観る事から始まります。
そこには、なんの輝きもない、大量生産された、ただ日焼けをまっている商品が積まれたり架けられたりしている事も多々あります。
そんな品物を見て、『おかしいなぁ、本当は良い物だから今に伝わっているのに、なんでこんなしょうむないんやろ?』と想うわけです。
なんで、立派な名前を持っていながら、無様な姿をさらしているんだろう?
そう想うわけです。
それは、本来の魅力を発揮する機会が与えられていないからだ!と想うわけです。
そこからがスタートです。
では、その商品の本来の魅力とは何なのか?
それを歴史的、技法的に勉強して、アタマで組み立ててみるんです。
そこには、価格や手間の為に、捨て去られた『美のエキス』が浮かんでくるんです。
美のエキスが入っていない工芸品は、アミノ酸の入っていない料理と同じです。うま味がない。
栄養はあっても美味しくないんです。
そのうま味を取り戻そう!そう思うんです。
そのうま味とは何か?
そこには歴史的考察が入って来ます。その染め物や織物が生まれた時代背景、自然風土などを思い浮かべ、可能な物は体験してみる。
そしてそのうま味のたっぷりはいった品物を作ってくれそうな所を探す。
ある場合は良いのですが、無い場合は断念せざるを得ない。
幸運にもあった場合、まず数反作ってもらう。
その時に、こちらの思いを十分に伝える。ここが1回目の勝負です。
どんな問題意識を持って、どんなものを作りたいのか、それをできるだけ丁寧に熱意を込めて作り手に語る。
そして注文品が上がってくる。
その品物をジッと、ジッと見る。
そこに、今足りない物は何か、足りない物があったら、自分なりの味付けを考える。
伝統的な物の上に、伝統的で新しい物のエキスを塗って、新しい魅力を引き出すのですね。
ステーキに醤油をかけるようなもんです。
それが本来の味を壊す物であっても行けないし、私が作るなら私らしくないといけない。
そして、また、再度作り手に、意向を伝える。これが二回目の勝負です。
これを納得いくまで何度もやります。
三度目の勝負は、お客様の反応です。
お客様の反応を元に、軌道修正をしていくんです。
それがなければ、作品は独善的なものになります。
いくら自分が良いと想っていても、お客様に受け入れてもらえなければ、何の値打ちもありません。
おかげさまで私はよいお客様に恵まれているので、素晴らしいヒントとご批判を頂く事が出来ます。
お客様こそが私の最高の財産ですね。
そして、一通りお客様にご覧頂いたら、また、次へ次へと新しい試みを加えていく。
そのためには、美のタネをたくさん持って居た方が有利です。
美術館に行ったり、能や文楽を見るのはそのタネを得るためです。
思いつきだけでは、その作品は一過性の物に終わり、作り手も使い捨てのような感じになってしまいます。
よいお客様、よい作り手さんとの縁があれば、あとは自分の努力です。
その努力がなければ、よい作品を生み出し続ける事はできません。
それが、まさにプロデューサーのしごとなんですね。
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