自分で商品を発案する時のことを考えてみましょう。
これは、あるものの廉価版を作ったり、コピーする事ではありません。
今、市場にない新しいコンセプトを持った物を作るという意味です。
人それぞれだと思いますが、私がどういう具合にして新しい商品を作り出すかを紹介してみます。
まずは、自分の得意分野、いわば経営資源を自分なりに認識します。
どこに差別優位があるのか、どこに他と違う魅力があるのか。
それを自ら押さえた上で、市場をじっくり見渡します。
市場を見渡すと、ボコッと落ちている部分が見えてきます。
アレッ?本来はあっていいはずの物がないときがあるのです。
それは日本の市場が一方方向に集中しがちだからです。
特に今はマーケティングやメディアが発達しているので個性というより、売る側の都合で商品の傾向が偏ってしまっているのです。
でも、本当はそんな事はないわけで、好みは人それぞれ。着物、とくに高価な染織品は流行廃りで買うものではないわけです。
あくまでも自分の好みに合うもの、長く使える物を買うのがふつうです。
そのボコッと落ちた物が世の中で必要なものならば、拾い出して新たに生み出す価値があるわけですね。
伝統工芸の世界で、まったく新しい物はありませんし、必要ないと私は思います。
古い物に少しだけ新しさを加えるだけで、光はよみがえると私は考えています。
次はそれを形にしてくれる作り手を探します。
いまおつきあいしている人でもいいし、それがだめなら新しい人を捜します。
これは縁です。
縁があれば、出会いがあるでしょうし、なければお蔵入り。
でも、プランはそのまま持っていて縁がつながるまで待てばいいのです。
あとは、作り手と試行錯誤して、自分のねらいにはまるまでやり続けます。
この過程を進行しながら、どう説明するかのストーリーを考えます。
このときにはじめにどう着想したかが大事になるんです。
なぜ、この商品を生み出したか、この商品がこの世に生み出される意義は何なのか。
それがそのままセールストークになります。
それに、着物としてどうなのか、これを持つとどういうメリットがあるのか・・・
様々な面から商品を客観的に観てみる。
そして、初反があがってきたら、早速販売にかけてみます。
お客様がどう反応なさるかをじっくり観察させていただくきます。
それが自信になったり反省になったりして、また次の製造指図にいかされますし、それでも軌道に乗らなければ廃盤という事もあります。
廃盤になっても、また何かのヒントで再生する場合も多いので、丁寧に取り扱っていきます。
今売れている物や、有名ブランド品のコピーなんて作っても仕方ないのです。そんなのは、商品開発でもなんでもありません。
古い物を掘り起こして、新しい何かを少しだけ付け加える。
新しさは破壊からは生まれません。
お塩ひとつまみ、お酢の一滴で新しい味が生まれます。
先人の努力や感性を信じて尊重し、その上で自信をもって、自分のねらうところを表現してもらう。
最後は自分で売り切ればいいのです。
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