日本の美術と工芸 第8話2017/2/6

『今回の私の目的は、新しくかつ非常に独創的な装飾デザインのスタイルを作りだし、それを芸術産業という大きなグループに新しく適用していく上で、美的および文明化の観点から、日本人が芸術というものを対して何をなしえたかを示すことであろう。逆に芸術が日本人に何をなしたかを示すのではない。とりわけ芸術の才能を使う際に、展開されれる原理をたどる事が私の目的であるが、この原理は、日本人の作品にあるすばらしさの根底になっている』

芸術に対して何をなしえたか?

その後のアールヌーボー、アールデコの流れに大きな影響を与えたのが日本の工芸であったことは、今までも書いた通りです。

それは『装飾』という事でまとめて良いでしょうか。

1番代表的でわかりやすいのがクリムトでしょうかね。

衣裳や背景に抽象的な文様が描かれてますよね。

工芸品だけでなく、美術品にもこういった装飾が加えられるようになっているのです。

私もあまりよく知らないのですが、西洋というか、キリスト教文化圏では、現実的に偶像崇拝が行われて居たために、新興の対象としてはイエス・キリストやマリアの絵や像が造られていたのにたいし、イスラム文化圏では、偶像崇拝が禁止されていた為にアラベスクなどの抽象的な文様が美しく組み合わされた造形が生まれたんだそうです。

日本では、仏教がホトケとして、仏像を拝む習慣がありますが、その他は、山岳信仰であったり、神道は具体的な形となった信仰対象はないですね。

なんなのか解らない柄や文様を『装飾』の為に描く。

つまりは、美しさだけを追求する道具として『文様』が採り入れられたのです。

何の為ではなく、ただ美しさの為。

『これ、ちょっと、ここにこんな柄入れたら、ええ感じやんか』

その延長線上には・・・

意味は無いけど、タダ美しいモノを造ろう・・・

写実的ではなく、徹底的な抽象化。

日本のキモノなどに着けられる家紋がそうですよね。

西洋人はあの紋を見て、腰を抜かしたに違いないのです。

私達がキモノや陶磁器に描いてある絵をみて、これは何の花だ、どの植物だと判別できるのは、見慣れて知っているからです。

たいていの文様は汎用的で、その組み合わせによって伝統文様は造られています。

梅とかキキョウとか桜とか松とか。

それはただの『柄』である場合が多い。

その柄が如何に美しく表現されているか。

全体の中で統一感があり、妙を得ているか。

そこが問題なんですね。

だからこそ、日本の美は『空間の美』と言われるのです。

そして、その延長線上に、シュール・レアリズムがあったのだろう・・・

私はそう考えています。

これはまぁ、私の勝手な解釈ではあるのですがね。

(つづく)

タネ本は日本の美術と工藝です。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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