『『のまんじゅう』と『星の砂』』2015/4/22

沖縄の首里に『のまんじゅう』というお饅頭があります。

中身はアンマンですが、それに食紅で『の』の字が書かれていて、熱々のを月桃の葉でくるんでくれます。

お饅頭から月桃の優しい香りが広がってとても美味しいのです。

その『のまんじゅう』は知らない人が居ないほど有名で、お祝いやお節句の時の祝い菓子として用いられるのだそうです。

有名になると物産展などへの参加要請もあるそうですが、絶対に出ないと聞いた事があります。

なんでも、内地にもって行ったのでは、同じ味がでないから、というのが理由だそうです。

確かにそうでしょうね。

沖縄で食べると美味しいのに、持って帰って食べるとさほどでもない。

海ぶどうや島らっきょうなんて、その代表格でしょうか。

私は日頃からデパートに出入りしていて想うのですが、いままで各種の物産展で、行列が出来る品物がありました。

主にスイーツ系ですね。

なんとかキャラメルやら、なんたらロール・・・

いっぱいありました。

でも、どれも大して長続きしてませんよね。

また、かつてはとても美味しくてひっぱりだったのに、手を広げたために味が落ちて今はだれも見向きもしなくなった食品ってありますよね。

大阪では馴染みの深いシュークリームや、塩昆布、新潟の鮭の瓶詰め等々・・・

一時は珍重された外国製のチョコレートもそんな感じでしょうか。

その事に関して、その会社の経営者はどう感じているんでしょうか。

たぶん、

『うちの商品は人気がある。たくさん造って販売チャネルを増やせばもっと売れる』

そう想うんでしょうね。

しかし、そこには

『なぜ人気があるのか』

という視点と分析が足りなかったのではないでしょうか。

一つのヒット商品から拡大して製品ラインを増やし、成長する企業もあるにはあります。

成功談というのは、めったにないから価値があるのであって、あまりアテになる話では実はありません。

マーケティング用語に『期待満足度』というのがあります。

その商品に対して持つ期待に対してどれだけの満足が得られるか、という話ですが、

たいして期待していなかったのに良ければ、満足度は高くなり、

すごく期待していたのに、想ったほどでなければ、満足度は低くなるんです。

品質そのものよりも、期待度によって満足度は変わるという事なんですね。

食べるモノは、口に入れてすぐに結果が出てしまうので怖いと想います。

満足度が低ければ、『失敗』『味がおちた』と想われてしまいます。

商店街でおばちゃんがつくってる『おはぎ』がめちゃめちゃ美味しければ、すっごく満足するわけです。

つまりは、ブランドに対して抱く期待にたいして、内容が低ければ満足度はさがるんです。

なんたらのチョコレートは世界的に有名やし、めっちゃ美味しいハズやと想って食べたら、なんやこれ!ということですと、もう二度と買わないわけでしょう。

それと食べ物でもなんでもそうですが、『飽きられる』という事があります。

どんなおいしいものでも、飽きるんです。

美味しければ、そこそこの売り上げは維持できるんですが、そんな爆発的な売り上げはいつまでも続けられない。

日本人はいろんなものを食べ、いろんな味を味わいたいと想うからです。

それを超越したのがソウルフードというものなんでしょう。

さて、売る方はといえば、物産展だとデパートとか最近は巨大SCなんかでもされるそうですが、今話題のスイーツなんて感じで、チラシにドーンとのっけます。

沖縄物産展で、『ちんすこう』なんて書いてもだれも買いに来ないでしょうが、かつてはなんとか食堂のラー油なんて出せば、わんさか、だったわけです。

そういえば、なんとか食堂のラー油、どうしたんでしょうね?

なんとか食堂のラー油は美味しいのですが、飽きられたのと、結局は食べるラー油が日本人の食生活に浸透することは無かった、ということなんでしょうか。

そういうのを『催事の目玉』といって、それで全体の集客をアップさせるわけですが、その時は、その目玉は飛ぶように売れるわけです。

それこそ行列する。

成功すればあっちからもこっちからもオファー、引っ張りだこです。

でも、長く続かないんです。

いままで根付いてなかったから珍しいのだし、ほんとうに美味しいモノはそんなにたくさん出来ないからです。

伊勢の赤福餅はみなさんご存じでしょうか。

一時賞味期限で問題になりましたが、売店で売ってるのと、本店で食べるのと、全然別物くらいに味がちがう。

味がちがうのにはいろんな要素があるんですが、一度本店でたべると、また食べてみたい!って想いますよ。

ちなみに、私は赤福の氷が好きです。

話はそれましたが、物産展を成功させるには目玉が必要です。

目玉の効力がなくなるとなると、新しい目玉はないか?そう物産展屋は考えます。

次は、ぬちまーす、次は、あぐー豚・・・

あぐーがそんなに沢山飼育できるわけないでしょって。

そして、かつての目玉は忘れられていくんです。

うちには、まだ大量の『星の砂』があります。

販促品をというので、買ってあるのですが、今は、タダで上げるといっても、持って帰ってくれません(^_^;)

北海道のマリモも同じような感じでしたよね。

『のまんじゅう』と『星の砂』

どっちがいいですか?

売る方、つまり物産展屋やデパート・SCは何でも良いんです。売れれば。

一世を風靡した商品が、いまは見向きもされなくなる、危険物を扱うように遠ざけられる、そんな話は、この和装業界でも枚挙にいとまがありません。

あなたが染織の作り手だとしたら、自分や自分の作品が『のまんじゅう』になるか『星の砂』になるか、どっちが良いですか?

問題は、『のまんじゅう』は『のまんじゅう』屋であって、『山城まんじゅう』は造れない、ということです。

私は551の豚まんを今日も食べました。

551の豚まんも、伊丹空港とアベノ近鉄で買うと美味しいそうです。

この情報へのアクセスはメンバーに限定されています。ログインしてください。メンバー登録は下記リンクをクリックしてください。

既存ユーザのログイン
   
新規ユーザー登録
*必須項目

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

目次