堺更紗 (小谷城郷土館)2017/2/21

堺の小谷城郷土館に行って来ました。

うちから車で30分ほど。

小谷城とはこんなところです。

古い農具やら家具、土器などが置いてあって、時節柄、小谷家に伝わるひな人形が展示されていましたが、今回の目的は『堺更紗』です。

堺更紗とは、長崎、鍋島に続く、和更紗の事で、ダイナミックで力強い色彩と構図が特徴です。

江戸時代までは盛んに造られて居たようですが、いまは史料で見るのみです。

本で研究しているのですが、一度現物を生で見たいと想ってここに行って来た、と言うわけです。

残念ながら館内は撮影禁止で写真はありません。

所蔵品はたくさん有るようですが、退色するという理由で展示されていたのはわずか2つでした。

ひとつは比較的細かい図案で割によく見る感じでしたが、もうひとつは幾何学模様で非常に面白い図案でした。

どちらもかなり退色していて、遺っているのは茶系の色だけ。

それで頭の中で塗り絵をしてみました。

当時は河内地方で盛んに綿が栽培されていて、堺更紗もその河内木綿の布に染められていたと言われています。

後染めですし、実際に長い年月使用されていたものなので、劣化は激しいのですが、それでも非常に趣深い布でしたね。

ただ、残念なのは、額に入って高いところに展示されていたので、生地の風合いや染め味の細かい所がチェック出来なかったところです。

やっぱり、布というのは、間近で見て、手にとって風合いを確認したいです。

染め物じゃなくて布なんですから。

生地と染めがばっちりとシナジー効果を発揮してこそ、良い布になるんです。

もうちょっとたくさん見たかったし、出来ればもう少し、保存状態の良い物を、近くで見たかったですね。

それでも写真で見るよりは遙かに良かったです。

堺更紗もいろんな使われ方をしてきたでしょうし、生活のなかでどのように彩りを加えてきたかを想像するのも楽しい物です。

布は着物や帯としてだけ活かされるものでもないと想います。

大切にタンスにしまわれて、美しい姿をそのまま今も伝えてくれる布はもちろん

有り難いですが、それにも増して魅力を感じるのは、使いたおされて、朽ち果てそうに

なっている布です。

民藝運動家の外村吉之助氏が『木綿往生』という言葉を残していますが、

最後は雑巾としてまで使われる事が布として幸せなのだろうと想いますね。

いまは高速織機になり、生地は大量生産されて、あちこちに溢れかえっています。

しかし、堺更紗がまだあったとき、布は貴重なものだったはず。

先日の夜咄の茶事と同じように、手織、手染というのは、昔の暮らしを少しだけ感じさせてくれるものなんでしょうね。

電気もガスもなく、すべてを人の手で,自然と共に暮らしていた時代。

薄暗い部屋の中で見る堺更紗は人々にどんな幸せを与えたでしょうか。

私も、使う人が幸せになって、末長く最後は雑巾になるまで使って貰える布が作りたいな、と想いました。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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