『公募展について想うこと』2014/3/7

春が近づいてきて、沖縄では沖展、5月になれば国展など、美術・工芸関係の公募展が開かれます。

作り手さんからよく『公募展に出そうかしら』とか『今年も出そうかどうか迷っているんです』と言われる事もあります。

私は、『出した方が良いですよ』と言うことにしています。

公募展に出すとなると、それなりの作品を出さなければなりませんし、準備もそれに応じてかかります。

私達商人に出す作品はしばらくお休み、という事になるんですが、長い目で見ると私達にもメリットの方が大きいと判断しているんです。

商売用のものばかり造っていると、マンネリに陥りがちです。

商売上は、そんなに新しい物がなくても、売れ筋商品をリピートしてくれる方が手堅いのです。

何年もそんな制作をしているうちに、新しい物、工夫した物ができなくなるんです。

でも、公募展に出すとなるといろんな人の眼に触れるわけですから、気持ちの入り方も違って当然です。

『どうせ、入賞なんてしないし、審査も納得いかないから』

そういう意見ももちろんあります。

でも、それでもいいじゃないか、と想うんですね。

どんな世界でも、公平とか公正なんてことはあんまりあるものじゃありません。

でも、必ず誰かが見て、良い物は良いと評価しているのも間違いないのです。

入賞したり、最高賞をもらっても、作品が実はくだらなければ、余計にバカにされるだけです。

公募展に出せば、他の人がどんな作品を出しているのかも興味を持つでしょう。

そういう、ある意味の訓練を積み重ねて行く内に創作力というのはつくもんだと想います。

私は大学の時に経済学・経営学のサークルに入って討論会の全国組織に加盟していました。

普通に学ぶだけではなく、外に出て研究内容を発表したり、意見を戦わせることによって、次の勉強の課題が浮き彫りになってきたり、知識がふかまったり、また持論の確立にも役立つものなんです。

ただ、あんまり駆け出しの時には弊害もあるので注意が必要でしょうね。

お世話になっている先生がいらっしゃったら、先生に相談して、十分に力が付いたかどうか、確認し、ご承諾を得てから出す方が良いと想います。

私の様な商人の立場からすれば、才能のある人を発掘するのは、たいてい公募展、あるいは、その時に出された作品の写真集です。

たとえ技術がまだ稚拙であっても、才能の片鱗は十分に感じとれます。

どんなに熟練しても造れない人には造れない、そういう物ってあるんです。

若い人の作品を見ていると、そういう意味で、ドーンと個性を主張してくる作品が少ないのが気がかりです。

どうも入選を狙って、無難になっている様なきがしてしょうがありません。

『せっかくやから目立ったろ!』くらいのやんちゃな根性があってもいいと想うのですがね。

作品を出せば審査員からいろんな事を言われたり、書かれたりするかもしれません。

そんなものは言わしとけば良いんです。

現実には、その論評しているご本人も、どうしたらいいのか解らなくて日夜苦悩しているんですから。

前提となる基本的な技術が無いと、どうしようもありませんけどね。

私も、一時期、どこかの公募展に作品を出してみようかな、と想っていたことがあるんですよ。

もし、なんかの機会でじっくり作品づくりができるチャンスがあったら、何か造って出してみたい。いつもそう想っています。

今年はコレ、来年はこんなのを出したのか、10年前は・・・と記録が残っていると、そこからまた新たな発想も湧いてくるかも知れません。

商品で出すつもりのものを、『これでいいや』なんて出すのならやめたほうがいいかも知れません。

何の意味もないからです。

作品を出すからには、きちんとした心のこもった物を出して欲しいですし、審査員も自分と同じ土俵に立っている作り手なんだと想わなければいけません。

現実に、くだらない人が審査員をしているなんて公募展は山のようにあります。

その人達に、『どやっ!』『解らしたんねん!』

くらいの気持ちでやってほしいですね。

商品としては公募展に出す作品とはまた違った要素が必要なので、その時はまた気持ちを落ち着かせて取り組めば良いのです。

公募展に出すときに真剣に取り組んで良い作品が造れない人に、市場に対応したバランスの取れた商業作品も造れるわけ無いのです。

市場性という制限がある分、商品の方が難しい、力量が試されると言ってもいいくらいです。

それとやっぱり、毎年、毎回、なんらかの明確なテーマを持って望んで欲しいですね。

今年は絣で良いのを造ってみようとか、

この植物染料にこだわってみよう。そんなんでも良いと想います。

自分のステップアップの糧として、取り組まれたら、公募展全体ももっと盛り上がるんじゃないかと想いますね。

どっかの呉服屋の展示会の様な公募展は、もう見たくないですね。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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