『センスを磨くには』2014/1/16

 偉そうに書くほど、センスが良いのか?と言われたら困るのですが・・・(^_^;) 

私自身も自信あるような、無い様な・・そんな感じではあるのですが。 

私がこの仕事に就いた時、何が良いのか悪いのか、全然解りませんでした。 

何処で学んだか?といえば、お客様が教えてくださったんですね。 

『あ〜、売れたということは、これが良い物なんだな』 

そんな事の積み重ねで、だんだん『売れ筋』という物から掴めてきた様な気がし 
ます。 

20歳台の頃なんて、花を見てもそんなに感動しないし、良い景色を見ても、何に 
も感じませんでした。 

人間というのは、歳をとるほどに感受性が増すものなのでしょうか。 

私が解らなくても、お客様はきちんと反応してくださいます。 

良い物は早くに売れるし、良くないモノは足が遅い。 

この業界では買い取りだの委託だのというのが問題にされる事がよくありますが、 

お客様がお買い上げになる要素の強い物を仕入れたら良いわけで、特に買い取り 
が難しい訳ではないのです。 

ただ、買い取って、売れ残ってしまうと、 

『なんでやろ?』 

と、その作品を見る度に、何度も何度も反省させられるので、身にしみるのです。 

そこで、 

『もう買い取りしないでおこう』 

と思うか、 

『次は絶対失敗しない』 

と思うかの違いなんでしょうね。 

キモノの商売や染織の制作活動をされている方は、それなりに自分のセンスに自 
信を持っているだろうと思います。 

自信が無ければ、出来ませんからね。 

ただ、それをつまみ食いするのと、生み出すのとでは次元が違うのは確かです。 

良い物は誰が見ても良いわけで、それが自分の算盤に合えば、欲しいと思うのは 
当たり前です。 

10の商品があったとして、1つだけ一番良いのを買い取る、これは簡単なんです。 

物作りの場においては、10造ったら、10が良くなければいけない。 

100発100中でないと、上手くいかないのです。 

10造って、その中の2つか3つが売れて、あとは売れ残ったら、これは仕事にな 
りません。 

手仕事の世界では、造れる量が決まっているのですから、作り手にとっては完売 
が基本です。 

昔、首里にすごい作家さんがいて、造る作品造る作品、すべてが素晴らしい。 

入荷したら1週間以内に、完売していました。 

作品の次元が、他とは全く違っていたんです。 

何が違うのか、どうしたら、あの作品をよみがえらせることが出来るのか・・・ 

私にとっては、とてつもなく大きな課題なんです。 

お弟子さんもいらっしゃったから、技法は付け継がれているはずなんです。 

でも、出来ない。違うんです。 

センス+努力としか今のところ、結論が出せていません。 

センスがあれば、選び出す事はたやすいですが、そこに努力とか執念というもの 
が無いと、持っているセンス通りの結果は出てきません。 

私自身が自分の力だけで、私のプロデュースしている作品が造れるか?といえば 
出来ないのは、そこに努力・執念がないからです。 

でも、これはこう、それはそう、と指示することは出来る。 

良いモノを選び出すことももちろん出来ます。 

さらによい結果がでるように、また、そのセンスが十分に発揮されるようにアイ 
デアを出すこともできる。 

作り手は作り手の、私は私の、『美の世界』というものがあって、それぞれ形は 
違うけれども、すりあわせて一つの作品となる、という事でしょうか。 

つまりは、センスというのは、もっている『美の世界』の事なんですね。 

では、センスというのは、どういう意味で使われ、どう定義されているんでしょ 
うか。 

センス=天分でしょうか。 

私の様な販売の世界では、『営業センス』と言う言葉が使われます。 

スポーツでも『センスがある』とか言いますよね。 

つまり、才能、天分という事なんです。 

では、染織やその他の工芸ではどうでしょう? 

やはりそう、『美的センス』なんですね。 

美に対する天分・才能・・・これってなんでしょう? 

多くの人が美しいと思える物を表現出来る力? 

そういう事でしょうか。 

そうだとしたら、簡単です。 

セオリーに則って造れば、多くの人が美しいと思えるものは出来ます。 

ファッション辞典をみれば、どんな色合わせをするのが良いか書いてあります。 

カラー・コーディネート。これが美的センスの核心でしょうか。 

経験的に言って、違うと思います。 

カラー・コーディネートのセオリーを無視した作品でも、すごい作品はたくさん 
あります。 

強烈なパンチ力のある作品はむしろそちらの方が多い。 

美的センス、それは、美に対する天分です。 

人の心をうつ美、それは何か? 

カラー・コーディネートもその一つでしょうし、造形美もそうでしょう。 

でも、一番ガツンとくるのは、『色』だと私は思っています。 

人間は多くのことを色で判断しています。 

食べ物の色 

顔色 

空の色 

海の色・・・ 

色で、様々な情報を得、行動を決めています。 

色に吉兆を感じたとき、人間は幸せに感じるのではないでしょうか。 

人工的に作り上げた枯山水の庭園。 

咲き乱れる山々の花。 

枯山水の庭には、中には見苦しい物もあるかも知れません。 

しかし、自然に咲く花がどんなに混じり合って咲いていても、不快に感じる事は 
ないでしょう。 

小さな花一輪、殺風景な部屋に生けるだけでも、心が安らぎます。 

なぜ? 

植物にとって、花は種族を守る為に咲くものだからです。 

つまり、美とは、生命体が生命を維持し、次に繋げるために必要なサインなんです。 

男性が美しい女性にひかれ、女性が逞しい男性にひかれるのも、同じ理由だと聞 
いたことがあります。 

おいしいは美味しいと書きますが、美味しいものは本当は体に良いハズなんですね。 

美味しいはずの無いものを美味しいと感じたり、美味しいものを食べても美味し 
いと感じないのは、 

どこか、調子が狂っているからなんです。 

料理人は風邪を引いてはならないと言いますが、体調が悪いと味がわからなくな 
るんですね。 

脱線したようですが、つまりは、こういう事だと思うんです。 

美的センスを育み、磨くためには、心身の健康を保ち、美しいものを常に見よ 
う、味わおうとすること。 

たいていの場合、強い自我が入り込むと、センスは乱れます。 

自我や欲が強くなって、作品が乱れた人を私は何人も知っています。 

その作品に対して、自分の心も我欲でねじ曲げて、自分を無理矢理納得させよう 
とするから、さらに病は深くなる。 

作品に心が出るというのは、そういう事なんです。 

私もまだまだ、修行が足りませんが、極めて遠き道を歩いて行きたいと思ってい 
ます。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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