SNS上で『琉球藍がない』という話を聞いていましたので、先日の沖縄訪問で状況を確認してきました。
事実だそうです。
聞いた話では、沖縄県最大の工場が、県内の染織家や組合以外のところにすべて売ってしまったとのことです。
それも唐突に『ありません』と言われたのだそうです。
沖縄の染織において琉球藍はなくてはならない存在です。
喜如嘉の芭蕉布、宮古上布、読谷山花織などは琉球藍がなければ全く生産できない状況になってしまいます。
どこに売られたかは諸説あり、よく解っていません。
それにしても琉球藍製造者は『沖縄の染織家が困る』と言うことを解っていながら、この行動をとった事は明白です。
私には到底理解できないことですし、ふだんは鷹揚でもめ事を嫌う沖縄の人達もこの度だけは、怒り心頭という感じです。
当然の事です。
沖縄県としても、それぞれの染織家にしても、有形無形の形で琉球藍製造者を支えてきたはずですし、裏切り行為といわれても仕方がないだろうと想います。
どこに売られ、どんな使い方をされたかによっては、今後も同じ事が続く可能性があります。
そうならないことを心から祈りますが、かなり心配な状況です。
植物染料は沖縄の場合、ほとんどを木の皮や根などの原料を煮出して自分の手でつくりますが、琉球藍だけは専門の琉球藍製造者に供給を任せているという状態です。
それだけ琉球藍の製造には知識と経験が必要だということです。
今回の事には、いろんな背景が考えられるのですが、ほぼ1カ所の工場に沖縄全島の琉球藍の供給を頼り切っていた事、その取引が全く個人の裁量に任されていたことも、いまとなっては問題とせざるを得ない感じがします。
琉球藍の供給が不安定ということになると、阿波藍など他の藍を使おうとかインディゴ・ピュアで代用しようとか言う話にもなりかねませんが、それだけは避けたいのです。
琉球藍の製造は琉球藍の栽培から始まって、沈殿法という独特の作り方をして製造されます。
内地の藍製品のほとんどがインディゴ・ピュアとの併用といわれている中、沖縄だけが藍は琉球藍100%を貫いているのです。(但し宮古島では色を黒に近づける為にインド藍が併用されていたとも聞きます。)
あの『くんじ』と言われる優しい赤みを帯びた、まるで甘い香りがそこからしてくるような独特の色は、石灰が絶妙に調整された天然発酵立ての藍でしか出せない物なのです。
琉球藍製造工場の後継の問題もあり、県がなんらかのコントロールをするべきではないかと想うのですが、どうでしょうか。
沖縄では幸い、造る人が居なくなるという状態には私が生きている間にはならないと想われます。
しかし、素材、染織の道具など、周辺の事ではたびたび危機に見舞われています。
組踊では、衣裳制作なども保護されていると聞きます。
染織家が、制作に集中できるような環境を整えてあげる事が、伝統文化の振興になることは間違いの無いことです。
次の作付け分から、いままで通りになるように心から祈っています。
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