『芭蕉布のケア』2016/2/26

明日は展示会なので、今日はもう一個あげておきますね。

表題の通り『芭蕉布のケア』について、です。

私自身、二着の芭蕉布の着物を所有しています。

いずれも琉装という沖縄風の仕立てにしています。

芭蕉布というのは、ご存じの通り、リュウキュウイトバショウというバナナに似た木の幹から繊維をとって造る布です。

正しいケアをするためには、まず繊維の性質を知る事が大事です。

まず、一番知っておくべき事は、芭蕉布は乾燥に弱いということです。

普通の着物は、絹がほとんどだと想いますが、これは逆に湿気に弱い。

真逆の性質の布を同じように管理していてはまずいというのは解りますよね。

冬場に芭蕉布の工房に行かれた方は見られたことがあるかもしれませんが、チューンアップしたかのような加湿器から大量の蒸気が出されて、湿度を上げています。

乾燥すると経糸が切れてしまうのです。

夏場にキンキンに冷えた展示会場で、ましてや冷房機から直撃の風を受けていた様な芭蕉布は、パキパキになって帰ってくることもあると聞いた事があります。

パキパキになると、当然繊維は切れやすくなりますから、破損しやすくもなるというわけです。

芭蕉布はある意味強い布ですが、ケアを怠ったり、間違った保存方法をとると、脆さをだすこともあるという訳です。

じゃ、どうやって乾燥を防ぐか、ですが、一番は着用することだと私は考えています。

ただでさえ沖縄より湿度の低い時期の多い本土では、どうしても乾燥しがちです。

盛夏用とされる芭蕉布を着るシーズンも短い。

できれば、最低年に一度は袖を通す。

夏場ですから身体からでる水分でかなり潤うはずです。

あまり大事にしまいすぎると、かえって逆効果です。

樟脳やシリカゲルのはいった収納庫(たんす)に入れない方がいいです。

毎年着ると毎年洗濯しなきゃいけないじゃない?と想われるかもしれませんので、汚れた場合の対応をお話ししましょう。

芭蕉布には、小さな説明書のようなものがついていて、たしか洗濯の仕方として『ゆなじに着けて優しく洗う』のような事が書いてあるはずです。

前に、平良美恵子さんに、それで良いんですか?と聞いた事があるんですが、なんとダメなんだそうです。

一番は、お求めになったお店にご相談なさること。そこから、正規品なら喜如嘉の芭蕉布組合に繋いでくれるはずです。

芭蕉布は伸子をうちません。

布目を直すのに、湯飲みを逆さにしてクルクル回してこすりあげていくんです。

つまり、これは、他所では出来ない事ですから、へんに洗い張りして伸子張りされてしまうと、オオゴトになるかもしれません。

とにかく、ちょっとしたしみ抜き以外は、買ったお店に持って行く事が唯一の方法だと想ってください。

もし、お求めになった小売店が無くなってしまっていて、どこに持って行ったら良いか解らない場合は、喜如嘉の芭蕉布協同組合に直接連絡をとってみてください。

丁寧に対応してくれると想います。

あと、購入された後の仕立てですが、邪道かもしれませんが、私は自分の芭蕉布は2枚とも居敷当をつけています。

盛夏用の着物に、居敷当をつけたら意味がないじゃない、と想われるかもしれませんが、そうされることをお勧めします。

本来、芭蕉の糸で縫うのが本当なんですが、そうでない場合が多いので、芭蕉の糸に縫い糸が負けてしまって、お尻がパリッ!という事が少なからずあるんです。

私は肥満体ですし、お尻が大きいので、特にヤバイ。

とくに正座したりしますと、お尻にテンションが掛かるので危ないです。

茶人は、絹や麻の夏衣でも、居敷当をする人が多いのはそのせいです。

もともとは、琉装でフワリと着られていた織物ですから、タイトに着付けしないことも大事です。できるだけふんわり着る。

できれば、身幅も少し広めに仕立てておいた方が良いかもしれません。

(私の場合は肥満体なので身幅が足らないのは言うまでもありません)

仕立てあがった古い芭蕉布も居敷当を足しておく方が良いでしょうね。

次にシワの問題。

シワになります。

でも、これは麻のシワとは感じが違って、キッパリとキレの良いシワになります。

麻みたいにシワシワじゃなく、シワッ!って感じのシワです。

折れジワといえば感じがわかるでしょうか。

これに関しては、まず一番は、気にしないということです。

バッグを持ったりして肘を曲げていると、そのへんがシワになりますが、その場合は、トイレなどに行って、手に水を付けて水分を補ってあげてください。

絹のように水が落ちてシミになることはないです。

芭蕉布を持ったら、とにかくあんまり神経質にならないことです。

そして出来るだけ、着ること。

着れば、これほど気持ちの良い布はありません。

肌触りがひんやりして、麻の様に肌にまとわりつかない。

そして、万が一、破損したら・・・

これもお求めになった小売店経由で芭蕉布組合に相談してください。

最善の策を考えてくれると想います。

芭蕉布に関するご相談をお受けすることが良くあるんですが、どんな場合でも、まずは、お求めになった小売店に持って行ってください。そこから、問屋、組合と話を流していくのが一番確実です。

そのためには、やっぱり信頼できるお店でお求めになる事が一番です。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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