今回は久しぶりの沖縄訪問でした。
いつもなら、春先と5月、7月という感じで行くのですが、販売の方が忙しく、うかうかしていると台風シーズンに入ってしまって9月に背中を押される形での訪問でした。
ご無沙汰のところも訪問したので色々見えて来たこともありました。
沖縄では、これは昔からのことかもしれませんが、様々な思いが交錯しているようです。
特に真剣に伝統染織の事を考えている人は、迷っているし、苦しんでいる。
大切にしたい理想ときびしい現実との間でもがいているようにも見えます。
そういう時、どうしたらいいのか?どう考えたらいいのか?
私にも適切なアドバイスをする自信はありませんが、
ひとつ言えるのは『淡々とやるべきことをやり、それ以外のことは気にしない』
ということなんだろうと想います。
なんのために染織をやっているのか?
生活のためなら生活のためになることをやればいいでしょう。
染織を休んで、スーパーのレジ打ちに行くのも一つの選択肢かもしれません。
でも、染織が好きでやっているなら、好きな染織を楽しんでやればいいでしょう。
後進にいい作品や研究成果を残してあげることが一番だと思うなら、それをすればいい。
いろいろやろうと思うからしんどいんじゃないでしょうか。
そんなにね、優秀な人間なんてそうはいないですよ。
優秀な人でもそこそこのレベルまで行くのは1つだけです。
自分は頑張って作っているしいい作品だと思うけれど、人に認めてもらえない、そんなことで悩んでいるとしたら、
それは良い作品が作りたい、そして人に認めてもらいたい、ひいてはお金がほしいという、いろんな欲をいっぺんに満たそうとしているからでしょう。
良い作品なのに認めてもらえないと思う時、本当にそれがいい作品なのか?という自分自身の審美眼を疑ってみて、そこに磨きをかけるべきなんだろうとわたしは思うのです。
審美眼が歪んでいて、その眼で自分の作品を見ても、正当に評価がくだせているとは思えません。
良い作品が作りたいのか?人から認められたいのか?お金がほしいのか?
価値観次第、人それぞれ。
どれが正しくてどれが間違っているということもありません。
今回はそれがきちんと整理されていて腹をくくっている人と、そうでなくてウロウロ迷っている人の両方を見ました。
私は私の生き方、やり方がありますので、それに合う方とお付き合いしますが、問屋によって考え方も価値観もそれぞれですから、なにが良いということはありません。
私は高い審美眼を身につけて、良い作品、良い作家を見出して、それを少しずつでも良いから世の中に出して、そのことでささやかなご飯を食べていければいいと想って来ました。
ですから誰にも頼らない、みずから審美眼のみをヨシとして良いも悪いも評価できる審美眼を身につけることを第一の目標としてきました。
その結果、人に評価されようがされまいが自分の責任ですし、あんまり気にしていません。
世の中の動きに合わせて、流行りのものや有名ブランドを揃えて商いをしようとすればいくらでもできますが、それは私の性に合わないし、第一面白くないと想ったからです。
作家さんが迷っている時、迷いは作品にすぐ現れます。
そんなとき、優しく声がけするか、厳しくカツを入れるかはその作家さんの性格次第ですが、自分の価値観がぶれているとそれも出来ません。
『なんやこれ、気ぃはいってへんやんか!』
『よっしゃ、こんどこんなんやってみよか!?』
かける言葉はいろいろです。
それによって迷いが吹っ切れることもあるみたいです。
私は私として、私の感覚で、その作家さんが何を目指すべきか、何を目標としていけば伸びていってくれるか、をなんとなく判断して、接しているんだと想います。
迷うのは、ずばり言うと、勉強が足りないのに、強引に先に進もうとしているからです。
お金がほしいのに商売の勉強をしていない人も非常に多い。
良い作品がつくりたいのに、他人の作品に対してきちんとした評価ができないとしたら、それは、土台無理な事を想ってるだけなんですよ。
良い作品を作る人は、それを大きな声で言うかどうかは別にして、他人の作品の良い悪いをきちんと分析して、私に語ってくれます。
そんな話から私も自らの審美眼を磨く材料にさせてもらってきました。
言えないということは、角が立つからということではなくて、解ってないからです。
審美眼・価値観が確立していないからです。
良い作品を造るにしても、他人から高評価を得るということにしても、お金を儲けるということにしても、どれもそんなに甘いものではありません。
1つ出来れば全部できるというものでも無いようです。
評価の割には作品が悪いとか、
作品も評価も悪いのに、お金だけは儲けているとか、
お金は全然もうけてないのに、作品はすごいとか、
いくらでもあります。
私も30年ちかいキャリアの中で、いろんな作家さん、作り手さんと会ってきました。
すべてを手に入れた人は、ほとんどいません。
王貞治を目指すのか、長嶋茂雄を目指すのか、金田正一を目指すのか。
人間、迷うものですし、私も迷い続けていますが、今はじっくり考える時間をもってみて欲しいな、と想った4日間でした。
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