もずやと学ぶ『芸術と経済のジレンマ』第7話

『もずやと学ぶ「芸術と経済のジレンマ」』第7回

第6章 舞台芸術団体の財政状態

冒頭に『舞台芸術の現在の経済状況に関する報告の中で、この章はそのクライマックスにあたる』とあります。

『舞台芸術の経済的安定性は、結局のところ舞台芸術団体の財政に依存しているのである』

そして、

ウィリアム・シューマンの『舞台芸術は解っているのにあえて儲け損なうビジネスに従事している』という言葉を紹介しています。

クライマックスというわりには、ちょっとわかりにくい導入ですね。

この本の良いところは、データがいっぱいあって、難解そうにみえても、最後のところでまとめてくれているところです。

もちろん、全部読んでいますけどね(^^;)

最後のまとめを引用します。

アメリカの職業としての独立した非営利的な舞台芸術に関する所得不足の総額は、現在の経済水準からみれば規模が小さい。しかし、個々の舞台芸術団体については、所得不足が生と死の違いを意味することがあるし、あるいは少なくとも満足のいく水準の公演と受け入れがたい水準の公演との違いを意味する事がある。

ここには、舞台芸術団体の財政問題がある。財政の不足によるッ苦悩がほとんど普遍的に見られ、重大な赤字を引き延ばしてきた団体は舞台芸術の質を落とさなくてはならないという脅迫を受けているのである。

(引用おわり)

つまりは、財政の健全化と芸術の質どちらをとりますか?ということです。

『どちらをとりますか?』

文楽の助成金を削ろうという人がいるみたいですが、その人は『文楽なんてくだらない』と思っているんでしょうか。

そうでないとしたら、少なくとも私が為政者なら、『なんでこんなおもろくてすばらしいもん、皆みにけぇへんのや?宣伝がたらんのか?市民の意識がひくいんか?どっちにしても、これはなんとかして、いけれるようにせな、宝の持ち腐れや』と思うでしょう。

文楽が素晴らしいと思っていたら、その質を落としてまで、財政を良くしようとは思わないはずです。

事はそれ、天下の台所、大大阪でのことでっせ。

市長さんも、議論が高まることを予想して文楽へ客を呼び込もうとした、っちゅうなら、どえらい男ですわ。

けど、ツイッターで言い訳しているのみると、そうでも無いようでんな。

経営資源という言葉があって、その要素として『ヒト・モノ・カネ・ノウハウ・情報』があげられます。

文楽であるもんは何か?そして無いもんは何か?

ヒト・・・・演技者はある(名人が現役)、でも興行を担当する人がいない?

モノ・・・・ある(歴代の人形などの資産と文楽劇場など)

カネ・・・・無い、ということになってます。

ノウハウ・・・芸のノウハウはある。でもそれを宣伝するノウハウがない。

情報・・・・・ない

ない所を補ったら良いわけですわ。

市の財政が厳しいというなら、他のところでこの経営資源を補えばええわけです。

東京では満杯になるのに、大阪はガラガラと良く言われます。

その言葉を聞く度にいろんな意味でむかっ腹がたつのですが、これは誰に言われんでも、理由がわかります。

地元民やからこそ、解る。

一番は、そういう古典芸能に関心あるひとが人口比にして少ない。

これは、大阪が現世御利益を求める気質であることと関係があると思います。

笑いたい時は笑えるところへ。うまいもん食いたい時はうまいところへ。客を喜ばしたろ思ったら、客がよろこびそうなところへ。

私が文楽に何を求めるかというたら、一つは人形の衣装、二つは人情話、三つは芸、四つに見た後の一杯、五つに地元の伝統芸能への貢献、とうかんじです。

それと大きいのは、悲しいかな東京と比較して、大学が少ない事も大きな要因だと思います。

この本にも書いてありますが、オペラやオーケストラに行く人はかなり高学歴だということです。

文楽に関していっても、ある程度の古文や歴史の基礎知識がないと、全然ちんぷんかんぷん、慣れる前に寝てしまうと思います。

愛好者に文学部出身の女性が多いように思われるのも、そのせいじゃないでしょうか。

そして、言葉がわかりにくいというのが歌舞伎と能・文楽の大きな違いじゃないでしょうか。

文楽劇場の舞台の上には現代語訳が出るようになっていますが、これを見ていたら人形が見られません。

能でも謡曲本と首っ引きになって舞台を見ていない人がたくさんいますが、これでは能を観たことにならないように思います。

私も、言葉を全部理解できる訳ではありませんが、解らなくても文楽なら人形、能ならシテの演技に集中します。

昔はマイクなんてなかったし、薪能では、声なんて聞こえなかったんじゃないでしょうか。

訳がわからないから行かないんだとすれば、TVで公演情報を流してあらすじを紹介したらどうでしょう?

市長さんもぶら下がり会見の時に、文楽にまつわる話を交えてコメントすれば、みんな彼を見直すし、文楽への関心が高まるはずです。

マンゴーもって、グーなんてしないでいいから、彼らしい貢献の仕方があるように思うんですよ。

伝統芸能や伝統工芸だけじゃなくて、為政者はもっと地元のPRに勤めるべきじゃないでしょうかね。

私は大阪府民として大阪のイメージがたこやき、くしかつ、よしもと、になっているのに我慢がならないのです。

芸術性を落とさずに、財政難を解決するにはお金を上げるだけじゃないはず。

そんなことも解決できないで、国政に出ようなんて、まさか思てぇしまへんやろな。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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