『カワウ問屋』2015/6/29

昨年の秋からはじめた新しい趣味、『釣り』ももうすぐ1年です。

フライフィッシング、テンカラ釣り、ヘラブナ釣り、海のテクトロと色々やってきましたが、まぁ下手の横好きと言ったレベルです。

投資金額と労力を考えればトホホという言葉しか出てきません。

渓流釣りは3月始めに解禁になって、8月末か9月末から翌年の2月くらいまでは禁漁期に入ります。

解禁してすぐは、河川を管理している漁協がアマゴなどを放流して、釣り客を呼びます。

ところがどっこい、解禁して一ヶ月も経たないうちにに魚はほとんど居なくなります。

エサで釣る人の多くが大量に魚を釣って持ち帰ってしまうのが大きな理由ですが、もうひとつ、これは放流魚以外でも大きな問題となっている事があります。

それは『カワウ』です。

カワウが魚をお腹いっぱい食べてしまうのです。

そしてそのカワウが異常増殖して、漁業だけでなく自然環境、サービス業に大きな悪影響をもたらしているのです。

環境省はカワウを狩猟対象に指定して、増殖を抑えようとしているんだそうですが、カワウは美味しくなく、また、銃を保持するのが大変で狩猟人口が減っていることから、まったく効果が出ていないという事の様です。

カワウは川のアマゴなどを食べるだけでなく、池のフナも食べてしまうそうで、あちこちのヘラブナの釣り堀が閉鎖に追い込まれているのもそのせいだと聞きました。

うちの近くの香芝市というところに分川池という大きな釣り池があるんですが、ここもカワウの被害で、魚が激減していると釣り人から聞きました。

これじゃ、せっかく釣り人を呼ぼうと魚を入れても、カワウにタダで食われてしまい、釣り人は釣れなきゃ来なくなるわけで、どうしようもありません。

川の上流に行くと、川に糸が張ってあるのを見かけますが、これはカワウ封じです。

その位深刻だと言うことですが、糸が張ってあっては釣りも出来ませんよね。

カワウも、その時に必要な分だけ食べればそんなに減る事も無いんだろうと思うのですが、腹一杯、えずく位食べるんだそうです。

一時、駐車場やら空き地にオタマジャクシやら小魚が大量に落ちてきたなんていう事がワイドショーで不思議なこととして報道されていましたが、これはカワウの口から出た物だと想われます。

その位、バカみたいに食べるんです。

川に釣りに行って、魚の姿が見えないと、食べられない位、大量の魚を持って帰る釣り師やカワウの事を想い、

それとともに、わが業界の事を重ね合わせるのです。

その時、その日に食べるだけを持って帰ったり、食べるのであれば、長く楽しめるし、新鮮な魚を食べることが出来ます。

カワウもはき出してしまっては栄養にならない。

魚が成長するまで待って食べれば良いんです。

それなのに、目の前に美味しそうな魚がいると、狂ったように魚籠やお腹に入れてしまう。

ちょっと売れていると聞くと、カワウの様に食いまくる。

でも、身につくのは少しだけです。

いままでそんなカワウ問屋にどれだけの商品が潰されたか、枚挙にいとまがありません。

大量に仕入れて売れ残ったら投げ売りする。

投げ売りしても価格が通らなくなったら、さらに粗悪なニセモノをつくって、結果的にその商品の市場を破壊してしまうのです。

カワウはアマゴやヘラブナだけを食べるのではありません。

オイカワやカワムツといったいわゆる雑魚まで食い尽くしてしまうのです。

大量に放流するから、余計にカワウは肥える。

肥えるから繁殖して大量に放流した魚のほとんどをカワウの餌にされてしまう。

でも、カワウは退治できない・・・

今となってはどうしようもない状態になっています。

ここ十年くらいで渓流釣りの人口は爆発的に増えたと言われています。

それと共に、釣り客をあてこんだ漁協があちこちの河川に魚を放流する。

それをカワウが食うからどんどん繁殖する。

繁殖して増えたカワウはまた放流魚を食う・・・

どうどう巡りです。

結局漁協は、大損することになるかも知れず、そうなると、放流が減少・中止になるかもしれません。

そうなると渓流釣りファンも減るでしょう。

漁協や渓流釣りファンの話は別として、では私達はどう行動すべきなのでしょうか。

問題は、仮需要に対してされる莫大な量の発注を拒否することです。

莫大な発注は必ず、投げ売りにつながり、その商品のライフサイクルを縮めます。

結局はカワウにタダでくれてやることになるのです。

ていねいに単品の利益確保をきっちりとやって、実需に合わせた商品作り、流通への供給をしていけば、投げ売りなど起きるはずがないのです。

そのうえ、大量受注は必ず、粗悪品を生みます。

粗悪品が違う名前ならまだ良いのですが、同じ名前で市場に出る。

そうすると、その名前を冠した商品すべてが、粗悪品、どこにでもあるショームナイもんになってしまうのです。

永年、作り手と真摯に向き合っている問屋は、決してばかげた発注をしないもんです。

川は広いようでも、魚が住める場所は限られています。

この業界のマーケットも年々狭くなってきています。

余計にカワウの餌食になる可能性が高いのです。

これは、一企業がどうなるという次元の話ではありません。

先人が永年積み上げてきた、伝統の印がついた工芸品がこの世から消えてしまう危機を意味するのです。

カワウの様に、お腹に入れた魚を途中で吐いてしまうような所とは付き合わないことです。

ちゃんとお腹の中で消化して、身になるような食べ方をしようとすれば、魚も育つまで待ってから食べようとか考えるはずです。

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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