もずやと学ぶアーツ&クラフツ第1話

『もずやと学ぶアーツ&クラフツ』第1話

さてさて、今日からはじめましょう。

私は美術工芸論の専門家でもありませんし、学者でもありません。

知識は十分ではありませんし、あくまでも自分の仕事に役立つような読み方をしていきます。

アーツ&クラフツ、アールヌーボー、アールデコ、といっても建築からファッションまできわめてジャンルが広く、社会現象とも言える大きな潮流です。

この中で、私が焦点を当てていこうとするのは、あくまでも日本の工芸であり、最終的には染織です。

大学で勉強した、あるいはしている方もいらっしゃると想いますが、学者さんとはまた違う視点というのを感じてもらったらいいのではないかと想います。

私は、工芸の世界に生きていますし、工芸品には興味を持ってきました。工芸論を体系的に学んだのは大阪芸術大学の通信教育です。

通信ですから講義はありません。本を読んでレポートを書くだけです。

私の記憶によれば、このジャンルの科目は数種類あったと想いますがオールAでした(^_^)v(あたりまえですが)

この連載もその知識をベースに、私なりの味付けをして書いていく事になると想います。

ゴタクを並べてないで書きますね(^_^;)

 プロト・アール・ヌーボーの歴史】

【アール・ヌーボーの起源】

ここではアール・ヌーボーの起源としてウイリアム・ブレイクをあげています。

ウイリアム・ブレイクというと民芸運動の柳宗悦が研究者として知られています。

これはポイントですので、押さえておいてくださいね。

なぜかというと、19世紀末からの工芸・芸術の流れは宗教・哲学・思想とは切っても切れない関係にあるからです。

そこを知らないと、『芸術・工芸の呪縛』から解かれることはないし、それがこの連載を書く目的の一つでもあります。

『ブレイクにはアール・ヌーボーのライトモチーフのすべてがある。流れるような動線とそのリズム。非対称性。植物的モチーフ』

ここであげられている『アール・ヌーボーのライトモチーフ』は日本人にとっては自然に感じられる物です。

ジャポニズムとアール・ヌーボーとの関係についてはあとでお話しする機会があるだろうと想います。

ブレイクがアールヌーボーに先駆すると考えられる点としてこの本の著者は次の3点をあげています。

1.モチーフ、形態

2.印刷技法によるグラフィックアート

3.詩にうたわれた思想(社会主義、宗教的、象徴的、芸術的ユートピア、宇宙的感覚)

そして、こう書いてます。

『ブレイクにおいてはこれはスタイルの問題ではなく、その終末論的思想によって選び取られたものである』

『ブレイクの抱いていたのはそこにおける天国と地獄の結婚というユートピアであった。終末感、予言書とは社会の激動と抑圧の時に現れる。それは社会の抑圧への怒りから生まれている』

ブレイクをアールヌーボーの起源として捉えるとすれば、そこには同じものが流れていると考えるのが自然でしょう。

ブレイクのもった抑圧への怒りとは何に対してであったか?

それは『革命思想』です。

ブレイクの生きた時代を確認してみてください。1757−1827ですね。

この間に何がありましたか?

非難爆発バスティーユ。1789年、フランス革命の始まりとなるバスティーユの襲撃が起こっていますね。

最近、慶應の通信で政治学の教科書を読んでいて気づいたのですが、この芸術の流れは宗教改革から始まっているんですよ。

つまりマルティン・ルター、カルヴァンの時代、実に16世紀の話です。

ここから、教会の権威の低下、王権への不満・地位の低下、フランス革命、各国で王権の打倒と民主化、芸術の主役の交代・・・

と繋がっていくのです。

この流れの中から、宗教・哲学が無くなることはありませんでした。

というより、常に宗教と哲学が核心にあったと言うべきでしょう。

これが理解できないのは日本人の特徴かもしれませんが、民藝論までの流れを考える上でも大変重要なポイントです。

柳宗悦がウイリアム・ブレイクの研究をしたこと、白樺派に参加していたことも注目すべき点です。

話を戻すと、このウイリアム・ブレイクからラファエル前派の運動を経て、アールヌーボーへと流れ込んでいくのです。

『ブレイクがあらゆるジャンルを超えた普遍的芸術家としてアールヌーボーの理想であることであり、究極的には普遍的人間を志向していたということがある』

普遍的芸術、普遍的人間って何でしょう?

『ブレイクの終末感、ユートピア思想における社会と歴史の弁証法の洞察、社会と芸術の孤立でなく葛藤。ブレイクはヴィジョネール(幻視者)であり、レボリューショネル(革命家)である』

そしてこう書かれています。

『子供の無邪気さと悪魔の美しさと、美と政治の揺れ動き、芸術を超えてかりたてられていく衝動こそブレイクとラスキン、モリスを、そしてアールヌーボーを外的スタイルのみでなく、内的精神においてつなぐものである』

なんとなく解るでしょう?

つまりは政治・社会を芸術で『革命』しようとしたのです。

宗教改革は神と民との直接の繋がりを意識づけた。

民はだれも、神の下において平等である。

すなわちこれは教会や王権の存在否定に繋がります。

ここから、持てる物による持たざる物の収奪という観念が生まれ、マルクス・レーニン主義を生み出します。

唯物史観です。

神の否定。反商業主義。

ウィリアムモリスも社会主義運動家であった事を考えると、この流れを指摘しない方がおかしいと想います。

そして、これには産業革命も大きく影響しているのです。

後に詳しく書く機会があると想いますが、王権の崩壊によって経済の主体は民衆に移った。

それによって、大衆文化が発展したんですが、これは蒸気機関の発明もあって機械による大量生産が行われる事になった。

それまでの職工は機械に仕事を奪われることになる。

これが、アーツ&クラフツ運動の原点となったんです。

という感じで、今日はこんなところにしときます(^_^;)

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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