もずやと学ぶアーツ&クラフツ第5話

『もずやと学ぶ日本の伝統織物』第5

ちょっとだけ動画でやりましたが、今年からは文章にしますね。

動画はたま別の話題でアップします。

動画で連載というのは、環境的に難しいようです。

でも、けっこう面白いのは面白いので、たまにやりますね。

【消えていった生業】

ここに『消えていった織物』として以下のものがあげられています。

・常磐紺形(宮城県)

・ぜんまい白鳥織(秋田県)

・開田麻布(長野県)

・井波絣(富山県)

・倉吉絣(鳥取県)

・半兵衛更紗・鍋島段通(長崎県)

・日代木綿(大分県)

昭和30年代に『消えていった』と認識されたものでこれだけあります。

このうち、倉吉絣と鍋島段通は復活したのですかね。

著者はこれらには共通点がある、として、それは要するに

『生業として成りたたなくなった』からだ、と書いています。

『それらは大なり小なり、その土地の産業だった。ある程度まで利害関係を離れた熱心な少数者(教員など)の努力によってその土地の産業は支えられてきた。しかしそれらは、時勢の移り変わりのなかで、ほどんど人知れず消えていったのである』

『生業である以上は、ほかのよりよい生業があれば、それに移ってゆくのはまたやむを得ない。それをおこし、推進したリーダーの姓名と意志のみで支えられるようなこの種の伝統織物は、やはり衰退すべき運命にあったのかも知れない』

悲しい事ですがこれが現実ですし、いまなお続いている状態でもあります。

食べて行かれなければ、仕事は続けられないのです。

沖縄でも石垣島に染織従事者が少ないのは、他に仕事があるからです。

観光の仕事が盛んで、物販も成果があがり、仕事があるのです。

ということは、新石垣空港が開港すれば観光客はさらに増え、染織従事者はさらに漸減していくでしょう。

久米島や与那国では他に仕事といえば、精糖と酒造(泡盛)くらいです。

そんな状態でも、織物の仕事を諦めなければならない人が出てくるでしょう。

沖縄は助成金などでも恵まれていますが、他産地はもっと厳しいですし、産地から離れた個人作家となれば、収入をアテにすることさえ難しいと思います。

では、どうしたらいいのでしょうか?

結論としてはどうしようもありません。

生業として成りたつことは無いと思います。

私が何度も書いている事ですね。

やるべき事はただ一つ。

生業として成りたたないという意識から出発することです。

ある産地の方がおっしゃっていた話がいまでも心に残っています。

『化学繊維が出来、自動織機が出来た現代、この布はもう終わった布なのよ。でも、その上で私たちはこの布を守っていかないと行けないの』

名言だと思います。

身を守り、体温を保つ為の布、衣服としては伝統工芸の布は役割を終えた。

代替品は安価に大量にあるんです。

ワンコインでシャツが買える時代です。

でも、その中で、自分達の仕事をどう位置づけるか。

どんなにねじ曲げた仕事をしても、手を抜いても、手仕事は割に合わない。

だから、やめるのか、それでもやるのか、です。

やるなら何の為にやるのか。

伝統を守るためにやる、自分の表現としてやる、そして造りたいからやる。

人それぞれであっていいと思います。

ちょっとしたお小遣いが好きな仕事して入るならそれで十分というのもいいでしょう。

私が思うのは、やると決めたからには、良いもの、自分の名前に恥じないモノをつくろうよ!ということなんです。

私とお付き合いのある作家さんは言われた事あると思いますが、私はしょっちゅう言います。

『この作品にあなたの名前が付いてでますけど、それでいいのですか?』

『この作品を造っていて、あなたは楽しかったですか?』

作家だったら、意に沿わないモノをつくるもんじゃありません。

問屋がどんなに言っても、イヤなモノをつくるんじゃない。

イヤイヤ、気の入らないモノを造ってもロクなものはできやしないのです。

その代わり、しっかり勉強することです。

『どうせ終わった恋だもの』じゃないですが、『どうせ終わった布』なんです。

売れるか売れないか解らないけど、とにかく良い物造ろう!楽しく仕事しよう!

そうしたら、良い物が出来て、造っているときの楽しい気持ちが伝わって売れるもんなんです。

伝統染織は正直にやればやるほど、手を掛ければ掛けるほど、もうけから遠のきます。

私の様な売る仕事も同じです。

でも、それでもやんねん!そやかて、好きやねんもん!

好きでも続けられないとうのなら、やめたらよろし。

恋も仕事も、諦めなければならない時もあります。

だからこそ、続けられるのであれば、腹の底で覚悟を決めて、楽しく仕事をしましょう!

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この記事を書いた人

萬代商事株式会社 代表取締役
もずや民藝館館長
文化経営研究所主宰
芭蕉庵主宰 
茶人

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